馬鹿馬鹿しい望み
何時だったか私は何処かのお人好しなお馬鹿さんに質問をしたことがある。
「ねぇ、あの、好きな人、いる?」
彼はその時、はあ、とあまり興味がないような感じで返事をした。
その反応は気に入らなかったけどとりあえず彼の言葉を待ってみた。
暫くして彼は「いるっちゃ、いるけど。まぁ、そうだね。うん、いると思うよ。きっといるさ」と私から目をそらしながら言った。
曖昧で答えになっていない返答だ。
はっきりしないわね、と嫌味たっぷりで言ったらいや、だって、と、少し焦った調子で私を見る。
「自分の事ってわからないじゃん。」
と、一言宣った。
わからない。
まぁ、そうなのだろう。
そうなのだろうか?
よくわからない。
彼はいつも言ってることがよくわからなかった。
「佳奈多さんは?」と、話を私の方にすり替えてきた。自分の答えをもうだしたと思ってるのだろう。しかし、さっきので、答えになってると言えばそう思えなくもない。結局私もよくわからないし分かりにくいのだ。
「いる、んだと思う。て言うか、そうしたい」
なんでぇ?と彼は怪訝そうな顔をした。
「いや、ほら、私も人間じゃない。それに、好きな人がいる人って、なんか素敵じゃない」
「それって馴れ合いたいだけじゃなくて?」
「慰めあってたいだけだわ」
「それで相手を幸せにしたつもりになるの?」
「なるわ。だから私は、きっと偽善者なのよ」
「偽善ねぇ」
そう言って彼は私の顔をじっと見た。
ああ、見ないで欲しい。
彼を見つめると、私がいなくなる。
まるで溶けていってしまうように。
まるで私がいなくなるみたいに。
自分が信じられなくなる。
自分を見失う。
ああ、だから願わくば、あなたをいつまでも見つめたい。
ねぇ、私をつれていって。
ここじゃないどこかに、私を。
ここじゃないどこかに。
ねぇ。
ねぇ。
「佳奈多さん?」
彼は私を訝しげに見つめた。
私は何も言わずに黙っていた。
彼も何を感じたのかそのまま黙っていた。
沈黙。
止まる。
留まる。
停まる。
彼は今何を思ってるのだろう。
いや、案外なにも思っていないのだろう。
私の事なんか、他人の事なんかに興味を持つ人間でもない。
その笑顔に意味は無いのに。
その言葉に意味は無いのに。
その行動に意味は無いのに。
それでも、あなたの仕草で、あなたの冷たい心に触れて。
私はあなたを好きになった。
片想いも良いところだわ。
だって叶うはずないもの。
笑い飛ばしてしまいたい。
でも、もしも。
天文学的な可能性で。
好きにならなくても良い。あなたが私の方を向いてくれるのなら。
私は。
いや。
無いことを考えちゃダメね。
だってあまりに馬鹿馬鹿しいもの。
私は思わず笑ってしまった。
彼は何で笑っているの?と言った。
私は笑いながら、貴方には一生分からないわ、と、言ってやった。
そう言ってみたら、何だか少し救われたような気がした。


終劇。
呂布
2015年07月16日(木) 07時48分11秒 公開
■この作品の著作権は呂布さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
久しぶりに書きました。書いてて楽しかったです。
ではまた。
呂布でした。

この作品の感想をお寄せください。
ありがとうございます。僕なんてまだまだなので精進します。 100 呂布 ■2015-07-22 23:46 ID :
PASS
心理描写はさすがに神がかり的な上手さですね………
敵う気がいたしません……
100 りゅーちゃん ■2015-07-22 22:44 ID :
PASS
合計 200
お名前(必須) E-Mail(任意)
メッセージ
評価(必須)点  削除用パス 


<<戻る
感想管理PASSWORD
作品編集PASSWORD 編集 削除