グラウンドゼロ
「なぁ、理樹。俺らはどうしたって権力とか言うやつに屈してしまう。それは、法治国家の日本だからこその話であってそれを破ることは出来ないんだ」
「絶対?」
絶対。
と。
昔、恭介は。
言っていた。
ような。
気が。
した。









「まぁ、そうだろうね」
時間軸をX軸右に戻して現在。
僕は喫茶店にいた。
「......その思わせ振りな独り言は、さてはあなたは美しいほどの電波ですな?」
僕の目の前には男がいる。
スーツ姿のこいつは上の使いらしい。
上とは、つまり国の。
非正規政府諜報班。
たいそうな名前だが本当かどうかは分からない。だが、本当だったら大変なことだ。
つまり、僕は国に目をつけられたということだ。
しかし、残念なことに。身に覚えがない。
本当に僕はただ普通に生活していただけだ。
犯罪も犯していない。
それに、場所が場所だ。
普通は誰にも聞かれない場所にするだろう。
何故喫茶店なんだ?
「?......ああ、この場所にした理由ですか」
どうやらそれなりの能力はやはりあるらしく、僕の言いたいことを感じることはできた。
「簡単ですよ。この店自体が国の物なんです」
ああ、なるほど。僕は合点がいった。
つまり、国の管轄下。
実際問題、国が全て管理をしている店など一つも無いだろう。そういった意味ではここはカモフラージュにもなって都合が良い。
主に、僕みたいのが現れたときとか。
何度も言うが、身に覚えはない。
「あなたは、しかし。まぁ、年齢をとやかく言うつもりはありませんが」
「いや、それよりも」と僕は突っ込んだ。
「何故僕はこんな場所にいるんですか?」
スーツ姿の男は驚いたように目を見開いた。
本当に分かってないんですか?と言われ、僕は頷いた。
あのバカ、と何処かの誰かに悪態をつきながら長いため息をついた。
「本当は要件を先に言ってから任意同行という形をとらなければならないんだが.......ていうか、もうため口でいいか?俺の方が一応年上だし。」
と、僕の顔をじろじろ見ながら「しかし、よくなにも言わずについてきたね」
「一応予定は空いてましたから」
「彼女とかいないの」
「いましたよ。もう何処にもいませんが」
少し間が空いた後、察したようで、ごめん、と謝られた。
「いいですよ。過去のことです。死人に口はありません」
「いや、君がいいなら別にいいが、しかしその言い方は」
「本題にはいらないのですか?」
「ああ、すまんね。分かったよ」
咳払いをひとつして「君の友達に能美クドリャフカという友達はいないかい?」
心臓が。
ドクン、と大きく音をたてた。
クドが。
なにをしたんだ?
「いや、彼女はなにもしていない。問題は彼女の母親にある」
と、鞄のなかから資料を取りだし、僕に渡した。
「これは」
「そう、あの宇宙ステーションさ」
そこには、クドのお母さんがいる宇宙ステーションの全体図らしきものが写っていた。
「しかし、あそこの問題は解決した筈じゃ」
「そうだ。国際問題にまで発展したあの事件は解決した。あの事件はな」
含みのある言い方で僕に目を向ける。
「あれ以来、俺達はあそこに監視体制を敷いていた。ええと、本来の使い方であそこを使っているのか、簡単に言うとそういうことを対象に見てきた」
男はコーヒーを飲みながら話す。
「米ソ冷戦が終結して大分たつが、未だに小さい火種は世界中に撒き散らしている。俺らはそれらをこの国に寄せ付けないように、否、全ての干渉を無くす為に、尽力を尽くしている」
「つまり、問題に直面する已然に問題を生まない?」
「そう、何事もそれがいいだろう?」
「それが何か関係が?」
「俺らは更に世界中のあらゆる不安要素を監視し、必要であれば何らかの対処をする。世界が何事もなく小さな殺しあいですんでいるのは、間違いなく俺らのお陰だ」
まあ、米国も最近になってやっと多少は動き始めたが、と言いながらも続ける。
「何があったんですか?」
「とんでもないことさ」
そう、とんでもないことだ。と、男は繰り返し呟いた。
「なぁ、人間が歴史上一番作ってはいけなかったものってなんだと思う?」
「?」
「もしくは、人間が人間として、あらゆる人権を奪われてしまうもの。......そして、広島と長崎に落とされた、あるもの」
「まさか............」
ああ、と、男は自嘲気味に笑った。
何故そこに行き着く。
考えたくない可能性がよぎる。
当たってほしくない。
当たってほしくないのだが。
「世界の均衡を一瞬で崩す悪魔の兵器。報復が報復を呼ぶ地獄の始まりともなりうる要素」
「核だ」
まるで、全てを諦めたように。
男は言う。
「彼女のお母さんは、この国に核を撃つつもりだ」


続劇。
呂布
2015年08月15日(土) 08時34分51秒 公開
■この作品の著作権は呂布さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
またとんでもない話を書いてしまいました。続けられる気がしませんが、頑張って書きます。
ではまた。
呂布でした。

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