鈴の音
目を覚ます。
見慣れた部屋の天井が瞳に写った。
随分長い間夢を見ていたようだ。
僕は狼狽する。
寝すぎて頭がガンガンと痛む。
ベットから起き上がり周りを見渡す。
二段ベッドの下には真人がいた。
「..........」
月明かりの光も届かず暗くてその表情はわからない。
でも、多分、生きてはいると思うから。
とりあえずは、大丈夫だと思った。
なんとなく、大丈夫だと思った。
「.......」
外は静かだった。時計をみると午前2時。深夜なんだから当たり前か。
僕はトイレに向かおうとしてベットから降りようとしたのだが。
「..........あれ?」
窓のところをふと見てみたら何かがいる。
というか、誰かがいる。
ていうか、鈴がいた。
「................」
僕は思わず絶句してしまったし、昔見た都市伝説の話を思い出してしまったし、顔から血の気が消えたのもわかった。
「........鈴?」
とりあえず呼びかけてみた。
鈴は何故か複雑な顔をしていたが、している意味がわからない。
「.............いや」
「いや、じゃなくてさ。何してんの?」
「いや.................」
「............................」
駄目だ。会話になってない。
「いや、な」
と言ってトン、と窓を人差し指で叩いた。
「これが開かなくて、理樹のところに行けなかった」
「もしかして、僕に会いに来たの?こんな夜中に?」
「会いたくなったからな」
「いや、そうだとしてもさ、...................まあ」
いいか。
そうだ。
それでいい。
鈴はこういうことも出来るようになったんだ。
思わず笑ってしまった。
「?なぜ笑う」
「いや、成長っていいものだね」
「?」
鈴はよく分かってなさそうだったがとりわけ説明する気も無かったからそのままスルーした。
結局のところ僕が僕の中で完結した話だ。
今までの事だってそうだ。
僕はどうにも他人と自分とのつながりを強くしたいと思うくせがあったようだ。
自分がこう思ってるから他人もそう思ってるなんて考えは余りにも横暴だ。
人と人は同じだけど相入れるはずなんてない。
それは拒絶という意味ではなく、そこに他人という区別があるからだ。
要するに、僕の想像なんか遥かに超えた所に鈴はもういるって事だ。
それは僕からしてみたら少し寂しいし、とても嬉しいことでもある。
人は成長する。
それがどんなに素晴らしい事か。
僕は目の前の鈴を見た。
そこには改めて棗恭介の妹がいた。
他人と触れ合うことが怖くて引っ込み思案になってしまう棗鈴はもういない。
僕に会いに来るためだけに男子寮に忍び込んでくる、
まさしく、棗恭介の妹がいた。
僕は、僕は成長出来たのだろうか。
その答えは、恐らくこの窓の外にあるのだろう。
窓の向こうには鈴がいるのだから。
早く開けてくれ、とせがんでくるのをいなしながら窓のロックを外す。
外気温の予想以上の冷たさに少し驚きながら僕は外に出た。
「さてと、このあとどこに行くつもりかい?」
「星が、綺麗な星が見えるところ」
「なら、僕はいいところを知っている。行ってみる?」
チリン、と鈴の音が響いた。
呂布
2016年05月05日(木) 21時29分56秒 公開
■この作品の著作権は呂布さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
懐かしく思い思わず投稿してしまいました。

この作品の感想をお寄せください。
自分もまた投稿していくので、またよろしくです!(*^^*) 100 みやっち ■2016-05-09 19:31 ID :
PASS
合計 100
お名前(必須) E-Mail(任意)
メッセージ
評価(必須)点  削除用パス 


<<戻る
感想管理PASSWORD
作品編集PASSWORD 編集 削除