不安定な関係
来ヶ谷唯湖と初めて会ったのは今から丁度一年前だ。ああ、いや、もしかしたらもっと前から出会っていたのかもしれない。僕が記憶してないだけで。だが、僕が出会ったと初めて「認識」したのは一年前だ。それであってる。あってるだろう。すまない。僕は確信的な事柄でも何度も言ってると不安になる性格だ。鬱陶しいと思うが出来ればスルーしてくれ。話を戻そう。一年前の話だ。僕は夕食を食べようと食堂に向かった。食堂のおばちゃんにいつも通り一番安いA定食を頼みいつも通りの席に座った。ここまでは僕のいつもの日常だ。
特に何も無い、つまらない僕の日常だ。
だが、その後が違った。
僕は小皿に乗ってる漬物をポリポリと音を立てて食べてる時に正面に誰かが座ってきた。
ああ、ちなみに食堂の食べるスペースは向かい合うように出来ている。
だから、それ自体は別段おかしいことは無い。問題は僕の目の前に人が座ったことだ。
僕は特別仲の良い友達はいない。いないというか作っていない。同じようなものか。とにかく、結構広くて座るスペースも沢山空いてる中、わざわざこの場所を選んだという事実に、僕は自然と正面の人間に目を向ける事となった。
まぁ、大体わかると思うが。
それが、来ヶ谷唯湖だった。
名前は知っている。というか有名人だ。リトルバスターズだかなんだかの「よく分からないチーム」に入っているらしい。
リトルバスターズ。
尊大な名前だ。
今更何と戦うというのか。
来ヶ谷唯湖は、というか来ヶ谷でいいか?フルネームは小恥ずかしい。来ヶ谷は僕の事など微塵もおくびにも出さず黙々とカレーライスを食べていた。いや、ていうか、うわぁ.......タバスコかけ過ぎだろ......あぁあぁあんなに真っ赤にしてるよおいおいおい。
「かけ過ぎだろ」
あ、と思う時既に遅し。思わず声が出てしまった。
じろり、と来ヶ谷は俺の方に無言で目を向けた。目が合う。なかなか鋭い目つきをしてやがる。僕は少したじろいだ。
だが。
「......私の勝手だが」
と、言ってまた視線を真っ赤なカレーに向けた。
僕は呆然としながら、しかし何か少し違和感を感じた。
イメージと違うとは、あまりにも言い過ぎな気がしないでもないが、しかし、こう、思ってたのとは違った。
もっとこう、殺伐としてるのかと思った。
いや、今の会話と言えない会話も充分殺伐としてると言えばそうだと思うが。
でもそうじゃなくて、まず僕の言葉に受け答えをしたことに驚いた。
僕を認識した。
いや、おかしい表現なのはわかってる。でも、違うんだ。そうじゃない。
そういうことじゃなくて。
僕は学生Aだ。
どこにでも居るただの学生だ。
だから、皆が知ってる、言わばキャラが立ってると言うのか、そういう人間は僕みたいなどこにでもいる人間には会話などしないと思ってた。
人間がそこら辺にいる動物に話しかけるか?
.......話しかける奴もいるか。
じゃあ、この目の前にいる来ヶ谷唯湖って奴は、かなりの変人だ。
変人ここに極まれ。
僕は食べ終わったA定食の皿をトレーごと持ってさっさと食堂から出ていった。
お互いもう会話など無かった。
こうして僕と来ヶ谷唯湖との最初の邂逅は呆気なく幕を閉じた。
僕はそれから一ヶ月間彼女と出会う事は無かったし彼女も僕の知らぬ間に色々やったらしい。
それについては未だに知らない。
だが、一ヶ月後のある日に、僕は彼女ともう一度会うことになる。
不機嫌そうな彼女に、僕は文字通り「巻き込まれた」のだ。
その話は、次の機会で。
呂布
2016年05月27日(金) 15時29分47秒 公開
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■作者からのメッセージ
モブキャラのオリジナルキャラって需要が無い癖に地味に重要な役目とかを簡単に担えたりするので色々便利。続けてやる。

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