関係が不安定
えーっと、どこまで話したっけ。ああいや、先週の事だからよく覚えてなくてね。あれ?先週だっけ?それとも一ヶ月前?もっと前か?ごめんごめん。昔の事は忘れる性質でね。ちょっとたんま。...........ああ、思い出した。もう思い出したよ。そうそう、僕は忘れっぽいけど忘れた事を簡単に思い出せるんだ。歪な人間だろ?歪で醜い.........いや、これ以上はいいや。長くなるし。やめたやめた閑話休題。さて、改めて次の僕の言葉からは一段落開けたつもりで聞いてほしい。
僕は来ヶ谷唯湖が大嫌いだ。
嫌いだったじゃなくて現在進行形で。僕は今でも来ヶ谷唯湖は大嫌いだ。
そもそも僕があんな事をする柄じゃないってのは自分が一番よくわかってたんだ。
僕みたいなモブキャラが。
例えばゲームで自分が主人公なのに村人Aがラスボスを倒したら腹が立つだろ?つまりはそういうことなんだ。
物語の主軸にいない人間が外側から干渉をするなんてことはしちゃいけないんだ。
ああ、勿論今のはたとえ話であって僕はそんなたいそれたことはしていない。
していないんじゃなくて。
出来ないの間違いかもしれないけど。
でもまあ、僕は何らかの形で関わってしまった。
リトルバスターズという物語に。
僕は昔から思うよ。
この世の中は物語に満ち溢れてると。
悲しい物語楽しい物語面白い物語つまんない物語恐ろしい物語泣ける物語怨嗟に満ちた物語悪意に満ちた物語殺意に溢れた物語心が挫ける物語敵意が滲み出た物語。
色んな物語はある。
その中で登場人物がいる。
当たり前の話だけど。
でもその中で。いや、「その外で」登場人物以外にも人間はいる。
僕だ。
僕みたいな奴らだ。
村人A。
学生A。
会社員A。
そんな名前すらつけられない人間はいる。
この世の中には物語なんて五万とあるのに。
その中にすら入れない人間が。
僕はだから語り部として、外から君に話しかけている気分だ。
読者目線みたいなものかな。
だから、中には干渉出来ない。本来ならね。
でも。それは外からの話だ。
中から外に向けてなら、いくらでも干渉出来る。
そう。僕はね、干渉させられたんだ。
あの馬鹿女に。
来ヶ谷唯湖に。
だから僕は来ヶ谷唯湖が大嫌いだ。
彼女は僕を傷つけたどころか。
自分を一番傷つけていったのだから。














僕は凡人なので特に得意なものは無い。
つまらない人間と自覚している。
だからといって別に生活に困ることは無いが、しかし個性が無いのを苦痛に感じる人間もいるし、全く気にしない人間もいる。
僕はたまたま後者だったのだ。
とまあそんなわけで来ヶ谷唯湖と初めて邂逅してから一ヶ月がたった。
特にあちらから関わってくることもなく、かと言って僕自身が気にすることもなく、いい感じでバランスが取れてるんじゃないかと思っていたのだが。
しかし、運命なんてものは馬鹿馬鹿しくて。
只今の時刻午後4時半。
僕は寮にいた。
同居人はどっか行ってしまったが僕は1人で快適に過ごせているし特に気にしなかった。僕はベットに寝転がりながら小説を適当に読んでいた。。
と。
コンコン。
ノックが聴こえた。
その時点で僕は頭の思考の半分を覚悟に、もう半分を驚愕に埋めた。
まさか。
いや、流石に。
でも。
というのが僕の頭の中を占めていた。
僕の寮に訪れる人間などいない。
そんな親しい人はいない。
僕は積極的に友達を作りたがらない人間だからだ。だからじゃあこのタイミングでこの場所に訪れる人間がいるかと思ったら1人想像出来てしまう人間がひとりいるのだテンパりすぎて文章が滅茶苦茶だ!
コンコン。
「................」
僕は恐らく顰めっ面をしている。それもとびっきりに。だが、扉の向こうの人間が立ち去ることはなさそうだったので(中に僕がいるのをなぜ知ってるんだ?)、僕は観念して部屋の扉を開けた。
「やあ」
「....................やあどうも。来ヶ谷唯湖さん」
まぁ、悪い予想は当たるものだ。
そう割り切ることが出来ないほど、僕は絶句してしまった。
「なんのようですか、というかここは男子寮ですよ?」
「監視カメラが無いのだろう。じゃあ問題は無い」
無茶苦茶言いやがる。
だが、冗談を交えて返してくれてるが、その表情はとてつもなく不機嫌だ。
顰めっ面をしている僕よりも顰めっ面だ。
「いや、君に用はないんだ。ただ、君の同居人に用がある」
同居人?
「そうだ。個人的になことでな」
「言えないことですか?」
「君には関係ないことだ」
「とは言ってもですね。関係ない事なんて世の中には一つもないんですよ。それに、同居人はいつの間にか出ていって今どこにいるかもわからない状態です」
なんか今嘘言ったな僕。
「いなくなっただとぉ?」
ずいっと僕の方に近づいてきた。
「いや、近いですよ。って、とりあえず入ってください。ほかの人に見つかったら面倒臭い事になりますよ?」
「私は面倒臭い無いが」
「僕が面倒臭いんですよ」
ふむ。
と言いながらとりあえず中に入ってくれた。
ちゃぶ台の周りに敷いてある座布団の上に礼儀正しく座ってくれていたが僕自身疑問は色々頭に浮かんでいた。
まあそれは今から話してもらうのだろう。
「粗末なものですが」
僕は来ヶ谷さんの目の前にお茶を置いた。
「ありがとう」
と言いながらも不機嫌な表情は変わらない。それを見てどうやらその表情は無意識に出てるようだ。指摘しない限り気が付かないのだろう。
それほどの事があったのか、はたまた今から起こるのか。どっちにしろ関わりあいたいとは思わないが。
「君の同居人がな」
お茶を1杯飲んで来ヶ谷さんはぽつりぽつりと話し始めた。
「私の知り合いに手を出した」
「手を出したって?」
「うん、なんというかな。まぁ、イジメだ」
「いじめ」
「かなり悪質でな。流石に腹が立ってここに来た」
随分直情的な人だ。なんか想像と違った。
「それは僕の同居人であってるんですか?」
「名前は把握した」
と、来ヶ谷さんは僕が知ってる名前を口に出した。
「あいつがなぁ」
そんなことをするやつだったのか。
..........いや、そんなことするやつか。
僕の筆記用具とかよく隠してたし。
探してる僕を馬鹿にした目で笑ってたし。
別にどうでも良かったから無視してたらいつの間にかやんなくなったんだよな。
「そんなところでここに来てみたんだが、いないと」
「はい」
「何時頃から」
「えっと、一ヶ月前の朝から。確か来ヶ谷さんにあった次の日でしたね」
「ん?以前に君に会ったことは無いはずだが」
「....................とにかく、一ヶ月前からですね。あいつがいなくなったのは」
「そうか」
来ヶ谷さんは溜息をついた。と、僕は気になった事があったので質問してみた。
「ところで、あいつ1人でやったんですか?」
「いや、三人組だ。その中であいつが中心人物だった」
「なるほど。ちなみに被害にあった人の名前は?」
「西園美魚。本が好きな普通の女の子だ」
聴いた事がある名前だ。
ていうかリトルバスターズの一員か。
まあ、彼女は見た目通り気弱そうだしあいつもいじめるターゲットを僕から変えたんだろう。
可哀想だな。
って。
何言ってんだ僕は。
なんでそんなことに関わろうとしてるんだ。
まるで登場人物みたいに。
目の前の彼女はそうだが。
僕は違うだろ。
僕は学生Aだ。
名前もない。
どこにでもいるただの人間だ。
「すまなかったな。時間をかけさせてしまって。そろそろお暇しとくよ」
「.............ええ」
「また情報が入ったら教えてくれ」
「ええ.....ああ」
いや、と僕言った。
「多分僕の元にはもう情報なんて入らないと思いますよ」
「何故?」
「.........」
僕はモブキャラだから。
「.............まあ、勘です」
「そうか」
彼女は僕の言葉など気にする様子を無く立ち上がって、玄関の方に向かった。
すると。
「ああ、忘れていた」
と言って振り返って僕を見る。
「君の名前は?」
名前。
僕に名前はない。
あっても教えない。
教える必要が無い。
教えたとしても、意味は無い。
「知ってどうするんですか?」
「いや、君の元に情報が入った時のためにね」
「話聞いてました?」
「聞いてたが、聴くまでもないと思ってな」
そう言って、初めて笑った。
薄い薄い微笑だが。
綺麗だなと思った。
思ってしまった。
「僕はえーくんって呼ばれてますよ」
僕は自分の優柔不断さに溜息をついて言った。
あいつが呼んだ名前で。
名前じゃない名前で。
「学生Aだから、えーくんです」
僕はどんな顔をしているのだろうか。
多分そんな疑問も、意味が無い。
僕はだから、らしくないことをしてるんだろう。
こんな、登場人物みたいなことを。
僕は自分の中の自分を再確認した。
僕は嫌な奴だった。



呂布
2016年06月02日(木) 22時13分41秒 公開
■この作品の著作権は呂布さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
西園さんがいじめられてるところを絡めるつもりです。

この作品の感想をお寄せください。
感想記事の投稿は現在ありません。
お名前(必須) E-Mail(任意)
メッセージ
評価(必須)点  削除用パス 


<<戻る
感想管理PASSWORD
作品編集PASSWORD 編集 削除