雨のち晴れ


理「雨…降りそうだね。」


授業も終わり、放課後

僕たちは、だんだんと青空が灰色へと変化していくのを眺めていた。


真「降ってきちまったら野球できねぇじゃねぇか!」


小「雨だと気分が落ちちゃうよ〜…
ねぇ?クーちゃ〜ん…」


ク「はい…このまま降らなければいいのですが…」


謙「お前ら、なにそんな顔してるんだ
降る前に初めてしまえば何も問題はない!
さぁ、野球だぁー!!」


たしか、天気予報だと降水確率80%だったような…


真「謙吾、お前天才かよ!
っしゃぁ!そうと決まれば早速グラウンドに行くぜ!」


あー、みんな行っちゃった…


しばらくして、雨が降り始めた。

次第に強くなりつつある。


理「みんな大丈夫かな…
風邪引かないといいけど…」


降りしきる雨を眺めながら、そう呟く。


美「雨は嫌いですか?」


後方から声が聞こえた。

目視で確認しなくとも声でわかる。


理「どうだろう…
嫌いではないけど、やっぱり晴れてたほうがいいかなぁ…」


外を眺めながらそう返す。

綺麗な青い髪をしたその子は、僕の隣に立ち外を眺め、口を開く。


美「そうですか…」


理「そうゆう西園さんは?
雨は嫌い?」


美「嫌いでした…とても…。」


理「でした、ってことは今は違うの?」


1度もこちらを見ることなく

ただ、じっと雨を見つめている。


美「そうですね…
今は幾分か、好きになりました。」


理「理由を聞いてもいい?」


初めてこちらを見たその子は

僕のことをまっすぐに見つめ、口を開いた。


美「直枝さん、もしも気持ちのいい快晴の天気だとします。
そこに急に雨が降り始めたらどう思いますか?」


その質問にどんな意味があるのだろう。

考えても答えはでない。

僕はありのままに答えた。


理「テンションが下がる…かな?」


美「では、その逆だと?」


理「少なくとも、嫌な気分ではなくなるよね。」


僕の答えはともかくとして

雨を好きになった理由につながるのだろうか。


美「私もそう思います…」


そう言うとまた外に向き直り、言葉を続けた。


美「どんなに強い雨も、長い雨も、いつかはやみます。
それは、人の心もそうだとは思いませんか?」


理「と、いうと?」


美「人の心の雨もいつかは必ずやむんです…
その原因が、人なのか時間なのかはわかりません。
ですが、私はそうゆう人がいることを知っています。
自分の身も顧みずに、他人を救おうと考える人を…」


普段はうるさいと感じる雨の音が

今はなぜか、心地よく聞こえる。


美「変わった人でなければ、嵐のような土砂降りの日に、傘もささず、外に出ようとは考えません。
濡れてしまうし、足元も最悪です。」


雨の似合うその子は、僕の方を見た。


美「直枝さんは、変わった人のようですね…。」


少し笑いながら、そう口にしたその子は

照れくさそうに、また外へと視線を戻す。


理「えぇ、僕が変わりもの…?
そうかなぁ、いくら僕でも雨の日に傘もささずに外へ出たりなんてしないけど。」


美「いいえ、直枝さんはずっと土砂降りで、曇ったままの私の心に入り込み、青空を見せてくれました。
ずっと晴れないと思っていた、そんな雨をとめてくれました。」


あの時のことを言ってるんだ。

ずっと孤独だった西園さん

海に浮かぶ白鳥のようになりたかった

それを救った時のことを。


美「ずっと雨は嫌いでした…
どんなに願っても晴れることはなく、それはこれから先も続いていくのだと、思っていました。
しかし、それを直枝さんが救ってくれたんです。」


理「あの時は夢中だったから…
どうしても西園さんを救ってあげたくて…
だって、おかしいじゃないか、ずっと降り続ける雨なんて。
雨は上がらなくちゃいけないんだから。」


その子の言葉を借りながら、笑顔でそう伝える。


美「はい、本当に感謝しています。
それからです、雨を好きになり始めたのは。
きっと、いつかはやむんだと気付かせてくれた直枝さんのおかげで。」


僕自身、そこまで大したことをしたという

思いはない。

それでもこの子がこんなに笑顔になってくれてるのなら

悪い気はしない。


美「それに…
雨が降らないと、虹はできませんから。」


少し考え込んで、笑いながらこちらを向く。


美「今思うと、雨というより雨上がりが好きなのかもしれません。」


そういって、にっこり笑うその子を見て

自然と僕も笑顔になる。


理「たしかにそうだね。
でも西園さんのその考えは素敵だと思うよ。
僕も雨のこと好きになれそうだよ!」


2人で笑いながら外を眺める。

次第に雨は弱くなり、やがて止んだ。


美「止みましたね。」


理「ほんとだ、西園さんの言うとおりだね。」


ほんとに、言うとおりだ。

雨なんていつかはやむんだ。


僕の心に降ってた雨も

いつまでもやむことはないと思っていた雨も

恭介やみんなのおかげでやんだんだ。


何か辛いことがあったって

それがずっと続くわけじゃない。

いつかはやんで

そして…



理「あ、見て西園さん
ほら、あそこ!」



人の心にも虹はかかる。





クリミア
2016年06月03日(金) 21時35分19秒 公開
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