絶望
目の前が真っ暗。
僕達、リトルバスターズはショッピングに来ていたはずだった。
それなのに今は真っ暗で手足が縄か何かで縛られているように感じる。
実際に手足は動かないのだから。

今なんでこうなっているのか全く分からない。
こうなっている直前の記憶がまったくないせいもあると思う。

『てめぇら、離しやがれ』
『お前達がやっていることは犯罪だぞ』
『鈴をどこにやった!!』

恭介たちの声が聞こえては来るけど、女子達の声が一切聞こえてこない。
恭介が鈴を探しているなら僕がいる付近にはいないってことだ。
こんなことになっているのに鈴の声が聞こえないのもおかしい。

僕も鈴達が心配だ。
今どこにいるのかわからないのだもの。
そこに聞こえてくるのは大人の笑い声だけ。
嘲笑うかのように、人の不幸を楽しむかのような声色。

不愉快に感じた僕も声を出そうとする。
けれどそれが声としてでることはなかった。
息が喉から漏れる。
喉が熱い。

『理樹いるなら返事をしてくれ』
『返事をするんだ理樹!』
『理樹!!』

恭介が、真人が、謙吾が僕を呼んでいる。
呼んでいるのに返事ができない。
なんで、なんで。

「そういえば言ってなかったなぁ、もう一人のガキなぁ。俺の腕を噛みやがったから首斬ったわ」

え?

「二度と声出せないかもなぁ! あははは」

『くそやろう!!』
『理樹!』
『ふざけるな!!』

しゃべれない? 僕のことだよね?
大人の嘲笑う声。
声が出せない理由はそのせいか。
僕はもう声が一生でないんだ。

その時、僕は絶望を感じだ。
それから数日経つ。
食事もさせてもらえない日々が続いて衰弱してきた。

時間が過ぎていくにつれて疲労していく。
手が使えれば携帯で……もう充電もないかなぁ。

『なんとかなるぞ、真人』
『何するつまりだ? 恭介』
『俺が合図したら理樹を担いで逃げろ』
『馬鹿なこと言うな』
『それしか今は道がないんだ』

『恭介達はどうするんだよ』
『俺と謙吾でなんとか女子達を助けてみる』
『任せろ真人』

三人の内緒話が聞こえてくる。
けど僕は意識も朦朧としてるし声も出ないから何もできない。

『一、二の三!!』

恭介の叫び声と共に僕の身体が宙に浮く感覚がした。
多分真人が僕を抱えたからだと思うけど。
けれど僕は抱えられた時点で意識が途切れた。

それから何日経ったかわかんないけど、僕は白い天井を見た。
そこが病院のベッドの上ということはわかった。
病院なら声出せるかなと思ったけどでなかった。

病室のテレビがついていてそこではニュースが流れていた。
内容はテロリストを名乗る男達が廃墟ビルに立てこもり事件を起こしたものだった。
そこで死者が出たことも報道された。

僕は目を疑った。
死亡した名前が【棗恭介】であったからだった。

恭介が死んだ?
嘘でしょ?

人質にされていた人達が助けられたが、一名死亡、それ以外は重傷と報道。
特に女性がひどかったと報道されていた。

性的暴行を受け、男性恐怖症になり今は精神病院で治療中。
僕はリトルバスターズのリーダーなのにみんなを守れなかった。

僕があの時、声を出せていたら……
僕があの時、足手まといにならなかったら……
僕があの時、テロリストに抵抗できていたなら……
僕があの時、気を失っていなかったら……

最愛の親友を失うことはなかったはず。
これはきっと悪い夢に違いない。

あのバス事故の時のように夢なんだ。
夢から覚めたら、みんなが笑っている世界が待っているんだ。

『理樹』
真人?

『恭介のことは悪い』
何言ってるの? これは夢でしょ?

『理樹が俺らのことを恨んでもしょうがねぇと思ってる』
だからこれは夢なんでしょ? わかってるよ!!

『それに、俺はあの時リーダーの理樹じゃなくて、恭介の指示に従った』
だから夢なんだからそんなこと言わなくてもいいじゃん。

『それにクド公も鈴も、三枝も二木も、来ヶ谷もみんなを俺は……見捨てたんだ』
真人!!

『そのせいで、恭介は帰ってこねぇし、謙吾ももう剣道ができねぇ』
真人! 聞いてよ! 僕の話を。

『大切な右腕がなくなっちまった』
え?
『俺が理樹を連れ出したばっかりに……』
謙吾が? 真人! 答えてよ!!

『恨んでるんだろ? 理樹……そんな目で俺を見ないでくれよ』
そんな目?

『わかってるから……許してくれよ……頼む、頼むから……』
僕が顔を挙げて真人を見ると、そこには至る所に包帯を巻いている真人がいた。
身体に包帯はまだわかるけど、それよりも目についたのは目のところに包帯が巻かれていた。

真人から僕が見えていない。
それなのに真人は僕に話しかけた。

見えないのに、そんな目といった。
真人は罪悪感に苛まれ絶望をしているようだった。
それが悔しくて仕方がない。

僕は情けなくてもう、元の暮らしに戻れないのだと思ってしまった。
七ヶ岳星夜
2016年06月22日(水) 12時09分53秒 公開
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■作者からのメッセージ
今回はシリアス系で

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