不関係が安定
気持ち悪い。
と、確かそう言われた気がする。
僕が「あいつ」によく言われた言葉は、確かそんな言葉だ。
理由も聞かなかったし聞く理由もなかったけれど、勝手にあっちの方から話してきた。
普通なのが、とても気持ち悪い。
普通なのが気持ち悪い。
僕は疑問に思った。
疑問に思うほどに、僕は自分というものがわかってなかった。
考えてなかったとも言える。
きみは、だから、何も無いんだろう。だから何かを盗られても、盗っても意味が無い。そもそも盗るものがない。
僕には、何も無い。
何も。
でも、僕は否定した。
否定したくって否定したわけじゃないけど、僕は「あいつ」に言った。
何も無いのも無い、と。
その言葉を聞いて何かを感じなければならなかったのに。
僕は分からなかった。
「あいつ」の事なんて、何もわかってなかった。














雨が嫌いで晴れが嫌いで雷が嫌いで雪が嫌いで雹が嫌いで天気が嫌い。
嫌いな天気は?と「あいつ」に質問したらそう答えてきた。
やべえやつだと思った。
でもそんな奴でも、とびきりイカレてるような行動はしなかった。
拷問か。
殺人とか。
まぁそんなこと出来やしないと思うけど。
でも、いじめとかもひろく見れば殺人だよなぁとも思ったり。
最悪死に追いやるような事だし。
しかも自分の手を染めずに。
ある意味最悪な殺人手段だ。
でも、何となく想像して、僕は自分から死ぬようなことはないのだろうと。
どことなくそう思った。
だから「あいつ」に関しての色々な問題とか僕はどうでも良かった。





のは、嘘だ。






「来ヶ谷さん」
一週間後、僕は外のラウンジにいる来ヶ谷さんに話しかけた。
「おや、君から話しかけるとは」
のんきに缶コーヒーを飲みながら優雅な出で立ちを守ってる。その姿は、まぁ、様にはなるが。そのすべてを無視して僕は話した。
「西園さんの件はどうですか?」
「なかなか進展しない。奴ら私が関わってる事に気づいてる」
「そうですか」
まぁ恐らく首謀者が「あいつ」だからだろう。変なところで勘がよく、変なところで運が良いあいつなら、流石の来ヶ谷さんも気づくことは出来まい。
だから、僕が関わるしかない。
そのかわりに、裏方の役目だが。
「理屈も理由も抜きにして、僕が手伝いましょうか?」
それを聞いて、来ヶ谷さんは顰めっ面をした。まあ理由はわからんこともない。
「.......それは、君がいいのか?」
しばらくの沈黙のあとそう僕に問いかけてきた。
「仮にも同じルームメイトだったんだろう。その、何か後ろめたいものはないのか」
「全く」僕は断言した。
「言ったでしょう。あいつに関して僕は何も思っていないと。それにルームメイトだから分かることもあります。あいつが今何をしたいのかも」
そのかわり、と僕は言った。
「それが外れてる場合もあります。なんせいなくなってしばらく経つのであいつの考えとかも変わってるかも知れません。」
そう、だから僕は彼女に言った。あいつについては教えることはないと。
何故ならあいつ自身に変化があるかもしれないからだ。
人間は変化する。
それは大人になるとも言える。
でも。
「恐らく大丈夫だとは思います」
「根拠は?」
「それよりも質問ですが、西園さんの被害は全て盗難ですか?」
「ああ?ああ、そうだ。確か前回は話してなかったな」
「それは僕とこれ以上かかわらないだろうと思ったからでしょう。僕もそう思ったから聴かなかったんですが.....話を戻しましょう。今言ったように西園さんの被害は盗難のみ。それが答えです」
「は?」と素っ頓狂な声を出されたが僕は続ける。
「あいつは昔から僕の持ち物を盗んでいました。僕は特に何も思いませんでしたが。でもその結果で分かる事があります」
「結果?」
「それしかしてこなかったんです。つまり、盗難しかしない。盗難をいじめとイコールで結びつけてる」
だから僕は盗難の被害しかなかったと聞いて、あいつだと確信した。普通だったらノートが破られたとか、机の上に落書きとか盗難以外の方法でもやってくるはずだ。
大切な物を無くす痛み。
大切な物を亡くす傷み。
実に「あいつ」らしい。
「ちなみに被害はどれくらいですか?」
「五件.....ああそうだ、五件すべてが盗難だ」
「やっぱり」
「しかし、手伝うとしても具体的には何をするんだ」
「それは」
僕は、それを言おうとして、思い出していた。
「あいつ」について。
でも、躊躇うつもりは無い。
躊躇う理由もない。
僕は登場人物じゃないからだ。
ただの人間だ。
でもそれは、「あいつ」だってそうだ。
だから、僕はある意味で憤りを感じたのだろう。
待ってろ。
今から引きずり下ろしてやる。
「それは」













僕は悲劇的な人間じゃない。
でも、僕の周りはみんな悲劇的だ。
だからと言って悲しい気持ちはない。
僕は何も思うことは無い。
僕は普通の人間だから。
普通だから、悲しくない。
誰かを愛おしいと思う気持ちも。
誰かを憎いと思う気持ちも。
殺したい気持ちも、無い。
でも「あいつ」はいつも言ってきた。
きみは気持ち悪い、と。
呂布
2016年06月23日(木) 23時25分22秒 公開
■この作品の著作権は呂布さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
シャドウバース楽しいです。多分次で最後です。

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